アニメ「アイドルマスターシンデレラガールズ」を貫く3属性の法則

アニメ「アイドルマスターシンデレラガールズ」のストーリーは、各アイドルに設定されている「キュート」「クール」「パッション」の3属性をもとにして、一定の法則で作られている……そんな妄想です。

これによって、卯月が劣等感に苛まれ頑張ることしかできなかった理由、凛が秋フェス前の重要な時期にトライアドプリムスにこだわった理由、未央がニュージェネレーションのリーダーに選ばれた理由……。さらには、杏が難問に答えた理由も、凸レーションが竹下通りを練り歩いた理由も、*(アスタリスク)の喧嘩の発端がカレイの煮付けだった理由も、プロデューサーと楓さんの関係も、それっぽく説明できてしまうのです。

(もちろん、以下に述べることは製作者の意図とは無関係の妄想です。また、映像を断片的にしか見返さず一気に書いたので、基本的な誤りも多いと思いますので、コメント欄やご自身の記事にてどんどんご指摘いただければと思います)

3属性の特徴

この3つの属性それぞれの特徴については、企画発表当時からさまざまな考察がされてきましたが、私は以下のように考えました。

  • Cuキュート)は「受容
  • Coクール)は「信念
  • Paパッション)は「先導

分類の実例については、記事「シンデレラガールズ あのアイドルがキュート/クール/パッションな理由 -3属性考察-」で紹介しています。

され、アニメ「アイドルマスターシンデレラガールズ」では、属性をもとに、以下のような法則があるのではないかと推察しました。

  • 自属性に合わないことをすると失敗し自属性に合ったことをすると成功を収める
  • 危機の際は他属性の要素を取り入れたり他属性の人物の助けを得ると問題が解決する
  • 同属性は互いにわかり合うことができる

これらの要素を踏まえ、ストーリーを見てみたいと思います。

3人の出会い

1話。アイドル養成所に所属している島村卯月は、他の仲間がみな夢をあきらめ去って行ったあとも、一人夢を追ってレッスンを続けています。卯月の属性Cuは「受容」。つまり、境遇を受け入れ地道に物事を続けることに長けています。

そんな日々を送る卯月のもとへ突然訪れた怪しい巨漢のプロデューサーがもたらしたデビューの話も、卯月は手放しで受け入れます。

一方、高校に入ったばかりで自分のやりたいことを探している渋谷凛もそのプロデューサーからスカウトされますが、この時点でアイドル志望ではないということもあるものの、卯月と異なりなかなか受け入れません。

彼女の属性はCo信念」。他者からの勧誘があっても、自分の意思がそれに沿わない限り、彼女はその誘いに乗ることはないのです。

ちなみにプロデューサーも、凛に何回断られても自分のやり方にこだわるところからCoだろうと思われます。これはその後のストーリーで重要な要素となっていきます。

プロデューサーは凛を動かそうとし、凛は今のままでは動く気はない。Co同士、愚直に自分の「信念」にこだわり、互いに歩み寄らないまま日々が過ぎていきます。

そしてある日偶然、Cu受容」の属性を持つ卯月がそこに加わり、その順応性の高さで仲介役となるとともに、凛に対しては純粋な気持ちでアイドルという世界を受け入れる手本も示したことで、凛はようやく動き出すこととなった……。ここまでが1話で描かれました。

そして2話から主人公組に参加したのは、Pa先導」の属性を持つ活発な少女本田未央です。

美央は出会って早々、基本受け身のCu卯月と、なかなか自分の殻を破らないCo凛を「先導」し、346プロ社屋内の探検にいざないます。

後に未央が卯月・凛と3人で結成したユニット「ニュージェネレーションズ」のリーダーとなった理由は作中でははっきり説明されませんでしたが、属性別の特性を基に考えれば、3属性揃ったこのユニットで先導役のPaをリーダーに据えるのは必然だったように思います。

プロデューサーの属性

さて、この2話では、プロデューサーが今や売れっ子の先輩アイドル高垣楓と挨拶を交わし、美央がそのことについてプロデューサーに聞くもそっけなく返される場面が出てきます。

作中で以後2人の関係が説明されることはありませんでしたが、プロデューサーについて、アニメで描かれたよりも過去の時期の他のアイドルとの面識が描かれたのはこの時の楓との間のことだけなので、何らかの縁があったという描写でしょう。

7話では、プロデューサーの上司である今西部長が、プロデューサーの過去を抽象的な昔話で語ります。そこに出てくるプロデューサーは、自分のやり方にこだわるCoそのものです。

その彼が過去に関わったアイドルがもし独自の信念を持つCoアイドルの楓であったのなら、別の信念を持つCoプロデューサーの意向にただ従順に従うことをよしとはしなかっただろう。ちょうどスカウト時の凛のように。

今西部長の昔話に出てくる人物の過去の失敗は、まさにそのような状況でした。

楓とプロデューサー、ともに自分のスタイルにこだわるCo的な人物であることが、後の話、たとえば2クール目序盤の15話でも、2人が美城常務の方針を公然と拒否するという形で描写されます。

美城常務もまたCo的人物であり、そこで過去のプロデューサーと同じく、信念ゆえに共闘できないという失敗を犯したとも言えるでしょう。

クールユニット「ラブライカ」

1クール目では、プロデューサー率いる新人アイドル「シンデレラプロジェクト」の中で次々に結成されていくユニットが描かれましたが、それぞれのユニットのエピソードも、ユニットのメンバーの属性で考えることができます。

まずは、6話においてニュージェネレーションズと同時の登場となり、ユニットに焦点を当てた独自の放送回が設けられなかった「ラブライカ」。

メンバーの新田美波とアナスタシアはともにCoですが、同格であり相手に干渉する立場ではないこと、そしてともに成熟した性格の持ち主であることから、価値観が衝突することはなく、むしろ互いに相手の信念を尊重する関係を築いています。

6話の初ライブは、後述する初バックダンサーの時の凛のような、Coらしい動じなさで成功を収めました。

後にアナスタシアがプロジェクトクローネに参加する際に美波はその判断を受け入れ、凛がそれに参加することをきっかけに大きく動揺したニュージェネレーションズのような事態にはなりませんでした。これは、自分の意志は曲げずとも相手の考えには不干渉という、ラブライカ流のCoのあらわれだろうと思います。

また12話の合宿回では、Coである美波のリーダとしての振る舞いが描かれました。

リーダーはプロデューサーから任命されたものであり、同じCo属性であることから、プロデューサーが意図してか偶然か、自らのやり方に近い人物を選んだととらえることもできるでしょう。

全体曲がどうしてもうまくいかず、皆Cu的な順応もできずPa的な鼓舞も不調に終わった時、美波はCoとして、有無を言わさぬ断固としたやり方をとりました。それが功を奏し、合宿は無事成功に終わったのです。

しかしその次の第13話、1クール目の最終回で描かれた夏フェスにおいては、美波のCoな頑固さが裏目に出ました。周囲の心配を意に介さず、自身の体調をも無視してリーダーとしての役目を果たそうとし、倒れてしまったのです

蘭子の成長

8話で登場した「ローゼンブルクエンゲル」は、Co神崎蘭子のソロユニットでした。

蘭子はCoの特性が「独自の世界観を堅持する」という方向に濃厚に表れた人物と言え、それゆえにプロデューサーとの通常の意思疎通にも苦労するありさま。

この回では、自分の世界観への強いこだわりに囚われる蘭子が、ユニットに対して仕事上与えられたイメージとの違和感を伝えようと四苦八苦します。

プロデューサーも四苦八苦しながら蘭子に合わせ、その言わんとすることを解読しようとすしますが、ともにCoであり、Cuのように状況にうまく順応することも、Paのように相手を上手く動かすこともできません。

しかしプロデューサーが自らの属性を薄める努力をした結果、無事に意思が伝わり、蘭子は自らのこだわりをそのまま反映させることができるようになりました。蘭子の得たそれはCo属性が最も力を発揮できる状況であり、当然の結果として見事成功を収めることとなったのです。

プロデューサーがCoの殻を破る場面は、この後もたびたび描かれることになりました。

キュートユニット「キャンディアイランド」

9話では、三村かな子・緒方智絵里・双葉杏というCu属性のメンバーで揃えられたユニット「キャンディアイランド」が登場すしました。

クイズバラエティ番組での勝負に臨むにあたって、彼女たちは不安を覚えるのですが、そこにPa未央が「なんでやねん」というツッコミ、つまりPa的に場を支配する行動様式を伝授します。

番組本番では、キャンディアイランドのメンバー各々が今のありのままの自分を受容することで序盤の遅れを取り返し、対戦相手である「KBYD(かわいいボクと野球どすえ)」チームを猛追。

結果は引き分けとなったのですが、KBYDチームは姫川有紀(Pa)・小早川紗枝(Cu)・輿水幸子(Cu)というように「Cu優位でPaの含まれるユニット」であり、属性的には全員CuでありながらPa要素を学んだキャンディアイランドに酷似しているため、その結果は必然だったといえます。

この回で大きな印象を残したのは、超難問にあっさり正解した杏でした。

従来ゲーム内で描かれてきたのは超絶怠け者というキャラでしたが、アニメのこの回で新たに加わったのは極端な天才要素。キャラ崩壊ともいえる飛躍でしたが、Cuという杏の属性を考えると案外アリなことかもしれません。

この回で描かれたのはクイズ番組。難問とはいえ、「問いへの正答」という「場の要請」に見事に応えるという、Cuらしい適応力の持ち主であることを杏が示した……そう考えることができるのです。

このとき相手チームにいた同じCuの幸子が、原作ゲームにおいて無茶振りに強がりを言いつつも拒否せず応えているのも、同様に属性で説明できそうです。

キュートを忘れたかな子と智絵里の失敗

2クール目の18話は、かな子・智絵里のみでの江戸切子の取材に行く話。

ここで2人は、杏を欠く状況への不安からか、Coのように事前にスタイルを固め、Paのように場を支配しようと意気込みましたが、属性の特性に合わない行動は当然失敗します。

たまたま近くで仕事をしていたKBYD、特に同じCuである幸子の叱咤をきっかけに、2人は目の前の江戸切子をそのまま受け入れ、それに対する自分のありのままの感想を述べるというCuらしい方法に立ち返ることができ、見事成功を収めました。

パッションユニット「凸レーション」

10話で登場した「凸レーション(デコレーション)」は、諸星きらり・城ヶ崎莉嘉・赤城みりあによるPa属性のユニット。

ファッションブランドのイベントに出演した凸レーションの1度目のステージを見たプロデューサーは、通行人を巻き込むようなもの、そしてメンバーに自由に動いてもらうことが必要だと考えました。他者への影響力が特徴であるPaの特性を考慮したものと言えます。

その後、2度目のステージ寸前にプロデューサーとはぐれるという危機に陥ったメンバーの解決法は、歌いながら竹下通りを練り歩くという、自ら場を支配する、Paらしさあふれるものでした。

ここで、一時期行方不明になったメンバーの代わりに呼ばれたのは、凛・美波・蘭子のCoメンバー。凸レーションが着る予定だったブランドの服を着せられますが、自分の世界を持つCoはうまく適応できないし、Paのように相手を巻き込む力も無いということが、その似合わなさで視覚的に表現されています。

蘭子だけは偶然世界観が近かったためか、気に入ってしばらくそのまま着ていました。

このエピソードは、円盤特典である26話で卯月のファッションショーが描かれたのと好対照でした。

受容の属性であるCuの卯月は様々な衣装に適応できるのです。

パッションの危機と復活

2クール目では、17話で莉嘉・みりあ、そして美嘉のPaメンバー3人を中心とした話が描かれました。

美嘉は美城常務の圧力によって意に沿わない方向に方針転換を強いられ、莉嘉は教室で生意気な男子に自慢した番組レギュラーの仕事がむしろ馬鹿にされかねないものだと知り、みりあは妹ができたことで母の意識がそちらに向いてしまう……。いずれも、場を支配するPaの力を削ぐようなできごとであり、それぞれが危機を迎えます。

この状況に対し、年少の2人は上手く対処することができませんでしたが、最も年長である美嘉はCu的解決策をとり、要求に適応しようとしました。結果、常務の方針に沿った新しいスタイルは大衆に受け入れられ、成果が上がります。

そして、愚痴をこぼす莉嘉に対しては、意に沿わない行動を強いられている自分と重ね合わせてしまい、適応しろとCo的に叱責してしまいました。しかし、Pa属性には合わない行為であることから心は晴れません。

それを晴らしてくれたのが、同じPaとして分かり合えるみりあとの交流でした。ともに楽しく遊んだ後、みりあの事情を打ち明けられた美嘉は、他の場所ではこらえていた涙をみりあの前では流してしまいます。

一方莉嘉は、同じPaでありユニットの仲間であるきらり、そして受容の属性であるCuの杏・かな子・智絵里に心配され慰められます。そして、服で自分らしさを主張せよというPaきらり、どんな服を着ていても自分は自分なのだというCu杏の対立する意見から、衣装はそのままでメイクや装飾品、そして振る舞いによって自分のスタイルを示し、場の空気をその色に染めるというPaらしい見事な折衷案を編み出します。

さらに、莉嘉の収録を見た美嘉はそこから気づきを得て、大人路線のファッションのままギャルスタイルのポージングで臨むことで、さらなる高評価を得ることになりました。

みりあもまた、美嘉との交流で姉としての普遍的な悩みを共有し、積極的に母親に協力するという方法で自分の立場を獲得したのです。

3人とも、変えられない状況という制約のもとでも自分らしさを出して場を支配するというPaらしい解決策を手に入れました。

また、元々仲の良い莉嘉とみりあに加え、仲の良い姉妹であった美嘉と莉嘉が、一旦衝突しながらも絆を取り戻したこと、そして年齢もアイドルとしてのキャリアも離れた美嘉とみりあが深くわかり合える仲になれたことで、同属性は互いを理解できるということを示した回だと言えます。

属性不釣り合いなユニット「アスタリスク」

残るは前川みく(Cu)と多田李衣菜(Co)。

みくは3話の前半で、卯月・凛・未央が先にステージに立つことに納得がいかず、勝負を挑みます。

みくの属性はCuであり、本来であれば状況を受け入れるべき役目。それが、Paの未央を相手に、Paのように状況を支配しようと試みました。

自らのCu属性に反したみくの行動は、必然的に失敗に終わります。

みくはこの後の5話でも、CDデビューで遅れを取った状況に順応せず、あれこれ抵抗を試みた末に社内のカフェで立てこもり事件を起こしますが、もちろんこれも失敗しました。

みくが李衣菜とユニット「*(アスタリスク)」を組まされる場面を描いた11話では、またもや属性違いの行動がうまくいかない話が描かれました。

ここでのみくは、ロックアイドルを主張するCoの李衣菜に対し、Coのような頑迷さで猫キャラにこだわり衝突します。我が道を行くCoに対しCuらしく順応的に振る舞えば、従属的立場に甘んじるだけ。みくはその立場をよしとせず、抵抗を試みたのでしょう。

ただし、猫キャラとなった理由は猫好きである自分の信念からではなく、可愛さでは埋もれてしまう自分に気づき、多くの人に好まれているキャラ設定にすがったものだということが、アニメ放映中にサービス開始されたスマートフォンアプリ「アイドルマスターシンデレラガールズ スターライトステージ」にて明かされました。これはまさしく、状況に適応しようというCuのものです。

他のユニットは同属性かソロであり、あるいはニュージェネレーションズのように3属性揃っているのに対し、アスタリスクは同属性ではなく、3属性のうち皆を導く役目であるPaを欠くアンバランスさゆえに、うまくまとまらないのは必然と言えます。

周囲の皆は、みくと李衣菜の関係を深めようとアイデアを出しますが、そこで場を動かしたのはPa城ヶ崎莉嘉でした。

莉嘉のアドバイスは、同居している姉の美嘉と自分が仲がいいことを理由に、みくと李衣菜も同居すればいいというものもの。しかし城ヶ崎姉妹は肉親である上に同じPa属性であり、元々相性ピッタリ。そうではないみくと李衣菜では本来うまくいきません。

そんなある日、李衣菜はみくのために、カレイの煮付けを作ります。Cu的に相手に合わせようとしたのだが、そこはやはりCo。自分の考えが優先であり、みくの好みを調べて合わせるという発想はありませんでした。

対するみく。魚嫌いという偏食はCuの寛容さをもってしても克服できないし、今はCuらしさを封印し突っ張っているため、それに激昂します。でもそこはCu。しばらくして落ち着くと、その寛容さで李衣菜を許しました。そして李衣菜もまた、Cuらしさを少し出して和解したのです。

このように、アスタリスクというユニットは、こだわりを貫くCo属性と相手に順応するCu属性をみくと李衣菜それぞれが持ち寄ったアンバランスさを、互いの努力で克服していくユニットと言えるでしょう。

アスタリスクと菜々・夏樹

2クール目においては、16話で美城常務による個性派バラエティアイドル排斥が描かれ、李衣菜はみくの猫キャラの行く末を心配します。一方みくは、同じCuであり同じく動物の耳を頭につけるキャラである安部菜々との交流を持ちました。

菜々が美城常務の圧力に屈しキャラを封印しようとした際、みくはそれを非難しました。Cu同士理解しあえていると思った菜々が、自分の望みに反することをしたからです。

もちろん、菜々のそれは本意ではありませんでした。

菜々は結局、本番中にファンの反応、特にウサミンコールをする「ファン代表」の前川みくに応えてキャラ封印を解き、美城常務の方針に背きます。これは、15話で常務の命じるイベント変更を認めず、当初の予定通り敢行したCo楓、そして17話で常務の大人路線に背き、ギャルスタイルのポージングを取り入れたPa美嘉に対応するエピソードでしょう。
楓はCoとして自分のスタイルを貫き、美嘉はPaとして自分が主導権を奪い返しました。対する菜々はCuとして、常務の方針よりも重要である目の前のファンの要望のほうに順応することを選択したのです。

19話でも、みくと李衣菜に焦点が当てられました。

Coとしてこだわりをもつ李衣菜でしたが、先輩であり、憧れのロックアイドルの体現者として以前から注目していた存在であり、Paとして人を導く力を持つ木村夏樹に惹かれます。

しかし、Coとして従属的立場との相性の悪い李衣菜は、結局夏樹からの誘いを断り、衝突しながらもすでに補い合う関係のできているみくを選びました。夏樹は、自分の道にこだわるCo李衣菜を見て、美城常務に与えられたロックアイドルユニットを完全に切る決心をします。

この回のラストでは、夏樹・李衣菜、そしてみくで3属性バランス良く揃ったユニットが見られたのですが、それはあくまでも一度きりのものとされました。恒常的ユニットとしては、エンディングでさらにCuの菜々が加わった4人ユニットが示された。母体となったアスタリスク同様、属性バランスの偏りが化学変化を起こすことが期待されたのかもしれません。

なお、この回では何人かのアイドルがジャージ姿で同時に出てくる場面があるが、みな属性色になっていました。作中にも属性分けがあるかのように示された場面です。

ニュージェネレーションズ最初の危機

このアニメの主人公格であるCu卯月・Co凛・Pa未央のニュージェネレーションズ。作中で各属性を代表する位置づけである彼女たちについては、それぞれの属性ゆえの危機が全2クールの要所に配されていました。

最初の危機は、大成功前のつまづきとして描かれました。

2話から3話にかけ、卯月・凛・未央がバックダンサーとして初めてステージに立つまでが描かれたのは、このアニメ最初の山場と言えます。3人をそれに導いたのはもちろん、Pa先導」属性の美嘉でした。

ちなみに美嘉がそれを提案した際、Coであるプロデューサーは渋りましたが、今西部長は受容しました。彼の属性はCuなのかもしれません。彼はその後2クール目には、美城常務に対して苦言を呈しながらもCuらしい受容的態度で、双方の間を行き来できる立場を維持していました。

レッスンを経て無事に迎えた本番前、初ステージの重圧に耐えかねた3人は三者三様の反応を見せました。

未央は最初こそPaらしく2人を先導していましたが、先輩アイドルがお偉いさんを前にした時の緊張感ある空気にのまれたり、スタッフに指示されて「せり」で否応なしにステージに上げられたりと主導権を取られてしまったことで、真っ先に混乱して固まってしまう。

そして卯月もまた、Cuの力をもってしてもこの初の大きな舞台に適応しかねている。

そこで同じく重圧に緊張しつつも頼りになったのは、動じない自分というものを持っていたCoの凛でした。彼女はCuのように適応しようとせず、Paのように場を支配する必要もなく、ただ二人に命じてステージへと向かうという「やるべきことをやった」のです。

ステージに出る直前、プロデューサーは2人の先輩アイドルにフォローを依頼した。プロデューサーとは異なる属性である、Cuの小日向美穂とPaの日野茜です。

彼女らは各々、Coのプロデューサーにはできない助けを与えました。Cuの美穂が状況への適応法を教え、Paの茜はその具体例を挙げて3人を先導したのです。

ちなみに、この回の楽屋での先輩アイドルの台詞も3属性に沿っているように見えます。

初ライブの失敗

次の危機は、多くの視聴者に衝撃を与えた6・7話でした。

ここでまず描かれたのは、未央の危機。

作中でPaの代表キャラである未央が直面した危機は、Paとして自ら状況を作る力が失われ、状況に動じないCoの力、そして状況を受け入れるCuの力が欠けていることにより起きたものでした。

未央はその周囲への影響力で観客でいっぱいの会場を作れると錯覚し、級友にその場面を見せようと声をかけて呼び寄せていました。しかし、美嘉での成功体験から出たその目論見は過大だったのです。

Pa先導)として状況を支配する力を持っていないことを痛感させられた未央は、その場を逃げ出しました。それは、クラスでの信用を失い自分の身近な人々への影響力を失うという要素もあったという点で、後の17話でのPa莉嘉に類似しています。

一方、凛もまた危機を抱えていました。

Cu卯月の受容力の助けによりプロデューサーのスカウトを受け入れたものの、自分同様強固な考えのあるCoのプロデューサーに従い依存する立場であり、なおかつそのコミュニケーション方法に対する考え方を異にしていました。そして、未央の危機へのプロデューサーの対応が引き金となって我慢の限界を超えてしまった凛も、黙って事務所を去ってしまいます。

今西部長が語ったプロデューサーの過去の失敗が、Co同士の軋轢による楓との別離であったなら、プロデューサーにとっての過去の悪夢の再来は美央の離反よりもむしろこの凛との衝突だったでしょう。

ここで頼りになったのは、Cuらしく初イベントの状況を受け入れることのできた卯月でした。

このとき卯月もしばらく欠席しましたが、それは決して初イベントでの何らかのトラブルのせいではなく、ただの風邪でした。

未央に逃げられ、凛とも衝突し、それらへの対応がうまくいかず状況を打ち破る力を失っていたプロデューサーでしたが、Cuである卯月は一切非難しません。Coのように強固な方針があるわけでもなく、Paのように鼓舞することもできない卯月は、その受容力でプロデューサーに前へと進む力を与えることができたのです。

さらに、未央と凛が一時の激情から覚めて復帰した際にも、卯月がその受容力により無条件で受け入れ、危機を終わらせました。

一方そこまでのプロデューサーの行動はどうだったか。

まず未央を復帰させたが、その手法はCo的でした。未央を訪ねたものの、未央一人の問題ではないなどという正論を述べたため、成果なく帰るしかなかったのです。

しかし卯月からCuのやり方を獲得した結果、自ら歩み寄りを見せました。

マンションのエントランスで立ち去ろうとする未央をいつもなら見送るところ、それを引き留め、自分の考えるあのイベントの成果を提示して、未央がそれを過小評価していたという誤りに気付かせたのです。

それはCo的に自分の考えをただ提示するものでしたが、未央の危機を受容することで、その言葉を届かせることができたのです。

しかし、次に凛を復帰させる際には未央の助けを必要としました。Co同士、他者を受け入れたり行動を促すことの苦手な二人は、Pa未央が手を取って結びつけることで初めて和解できたのです。

最大の危機

最後の危機は物語全体の終盤、かなりのボリュームで描かれました。

発端となったのは凛です。

Co代表である凛の危機は、状況を受け入れるCuの力がなく、自ら周囲の意識を変えるPaの力がないために起きたものでした。

まず、個人的つながりのできていた北条加蓮・神谷奈緒とユニットを組むという美城常務の提案に対し魅力を感じるというひとつの考えが凛の中に芽生えました。信念に基づく方針ありきで行動するCo同士惹かれあったのでしょう。

しかし、Coである凛はCuの順応性やPaの影響力が無く、このことが引き起こす周囲との問題をうまく処理できません。

掛け持ちは難しいとしてニュージェネレーションズの行く末を心配する未央。反対はしないが受け入れがたい状況の読みとれる卯月。凛は大切な仲間である2人をそれぞれを苦しませることを知りながら、Co信念)ゆえに自分の意思は貫きたいという相矛盾した状況に追い詰められた。揺るがぬ信念というCoの力に陰りが出ているのです。

それに対し未央は最初、凛と十分に話もせずにその場を飛び出しました。凛の決意が固く、Paの力をもってしても制御不能な状況を見て、またしても逃げ出したのです。

しかし6話で初イベントの場を逃げ出した時と異なり、今度はプロデューサーらの助けを借りるだけの受容力があったため、状況と向かい合う落ち着きを取り戻します。

ここで未央が取り組んだのが演劇です。

Paである未央は、凛と卯月に無断でそれを始め、ろくに説明することもなくそれを続けました。そして、そのことについてようやく3人が話す時と場も独断で決め、さらにその場では相手の言葉を遮り一方的に台本を渡して読ませるという、極端にPa的な方法をとりました。

Cu的な順応ではなく、自分の考えありきのCoとも異なる、Paである未央は、演劇の稽古を通し、自分の理想ではなく凛の欲する凛そしてニュージェネレーションズの未来を凛より先に見つけ、それを伝えることでCoの凛を動かそうとしたのです。

台本読みに最初は渋々従った2人は、最後にはすっかり感化されました。この不自然とも思える展開は、場の主導権を得て状況を支配し、相手を動かすという、Paの力のなせる技の象徴的表現でしょうか。

しかしこの時、卯月も危機に陥りつつありました。

Cuを代表する卯月の危機は、Coのような強固な自分の意思も、Paのように他者を動かす力もないことが原因です。

トライアドプリムスで活動を始めた凛、演劇に打ち込む未央に対し、受動的であるCuゆえに新しく挑戦すべきものを持たない卯月に危機の兆候を感じ取ったプロデューサーは、卯月に回答を示すというCo的方法で助けを舟を出しました。卯月を同じCuである美穂と組ませて、正統派キュートユニットを作るというものです。

同属性であれば相性がよく、過去にもそれで成功しています。卯月はCuの受容力で、その提案をただ受け入れました。

しかし、卯月が危機を脱せない理由は、今まで身近にいた凛と未央が別の居場所を見つけてしまったこと、つまりCoPaの喪失にありました。Cu受容)である卯月がつまづいた時には、Coのような自身の信念もなく、Paのように状況を支配することもできず、目の前のことを受け入れて「がんばる」ことしかできない。そしてこの時、それでは解決しない状況に陥っていたのです。

喪失を埋められない卯月は、美穂との仕事での些細な失敗をきっかけに現状の受容も限界に達して逃げ出し、かつてうまく対応できていた場所を頼りました。ここに来る前に長い間過ごしていた養成所です。

しかし、そこにいるという状況を受け入れるだけではアイドルのステージへ行くことはできず、道を示し他の場所へいざなってくれる存在がいなければ前へ進めないということは、すでに1話で示されていました。

卯月の復活

卯月復活のきっかけはやはりCoPa、つまり凛と未央でした。

再三卯月を訪問しながら状況を変えられなかったプロデューサーは、養成所の卯月を訪ねたいという凛と未央にあっさり場所を教えます。初イベント後の未央の危機に際しては自分での対応にこだわっていたのとの対比で、プロデューサーの変化として描かれたのでしょう。

養成所で卯月と再会し、公園に連れ出した凛と未央。ここで行動を起こしたのはCoの凛でした。場に適応するCuの性(さが)で当たり障りのない言葉しか述べない卯月に、断固とした態度で本音を話すよう迫ります。

ようやく卯月の本音を引き出し、卯月の抱えている深刻な劣等感を知らされた凛は、Coらしい確信を持って、卯月に価値はあるのだと伝える。Coの凛は、笑顔が体現する卯月のCuの力を必要としていたのです。

未央はこのときほとんど言葉を挟まず聞き役となっています。しかしこれは、今までの危機のようにPaとしての支配力を失って途方に暮れているわけではないし、Coのような独立心でも、Cuのように受け身というわけでもありません。Paとして成長を遂げた未央は、凛と卯月のやりとりが必要だと察し、最小限の言葉でそれを促し、Paらしく自ら場の流れを作ったのです。

未央の創り出したその状況によって、凛は卯月に対し抱いていたCoとしての信念を吐き出し、卯月は自分の本来持っている価値から目をそらし逃げ出していた現状をCuらしく受容するきっかけを得た。望む結果を得た未央はその後を引き取り、もういちど友達になろうとPaらしく道筋を示しました。

プロデューサーと美城常務

プロデューサーと美城常務はどうでしょうか。

美城常務については、楓(Co)・夏樹(Pa)からの拒絶、さらに美嘉(Pa)への影響力が限定的なものに終わったエピソードが描かれた後、Coアイドルを集めた「プロジェクトクローネ」は自分の思うような形で活動開始にまで持ち込んでいます。そこには凛とアナスタシアまでが望んで参加しました。

これは、常務がCoのみならず、人をその気にさせて動かすPaの力をも手に入れたことを示すのではないでしょうか。

一方、相手を受け入れるCuの力を未だ欠いており、それを示すかのように、Cuアイドルとの関係はここまでに描かれていません。その後、作中でCuを代表する存在である卯月を頑なに認めず、社屋の玄関で出会った際には辛辣な言葉を投げつけたことで、それは明確に描かれます。

一方、主人公サイドにいるプロデューサーは、プロジェクトクローネも参加し自らのシンデレラプロジェクトも査定対象となる「秋フェス」において、凛とアナスタシアにプロジェクトクローネへの参加を許し、そのあおりでシンデレラプロジェクト所属ユニットであるラブライカとニュージェネレーションズが参加できないという事態を許容します。

これは、プロデューサーが美城常務とは逆に、物事を受け入れるCuの力を身につけたことを示すのではないでしょうか。

1話でプロデューサーとの交流が描かれたのはCo凛とCu卯月であり、また、ニュージェネレーションズの初イベントが引き起こした危機をプロデューサーが解決するきっかけとなったのも卯月のCu力であったことは、本来CoであるプロデューサーがまずCuの力を手に入れたことの暗示といえます。そして、凛を初イベントの危機から復帰させるのにはPa未央の力を必要としており、Paの力を十分に発揮した場面はここまでにはまだない……。

卯月とプロデューサー

卯月の完全復活までには、まだ足りないものを埋める必要がありました。

まず、卯月の復帰の場となるイベントへ向かう途中、プロデューサーはまだかつての笑顔を取り戻していない卯月を見て、卯月にとってアイドルへの夢やニュージェネレーションズの絆を象徴する場所であるコンサートホールに寄っていくことを提案します。

そこで、凛がそうしたようにCoらしい自信を持って、卯月の笑顔の価値、つまり卯月の本来持っているCuの力の健在を伝え、ステージに上がるか否か、つまり憧れていたアイドルに復帰するか否かの判断を任せました。卯月はそれに応え、凛と未央の待つイベント会場の楽屋までたどり着くことができたのです。

プロデューサーが、相手を導き相手自身の行動を促すPaの力をも得たことが示された瞬間でした。

さらに、イベントの最初にステージに出た卯月が言葉に詰まってしまった時、シンデレラプロジェクトのアイドル達と、ユニットを組む同じCuの美穂の声援を受ける。特に美穂はアップで抜かれ、重要な意味を持つことが示されます。卯月が自身の持ち歌でありCuを体現する曲である「S(mile)ING!」を歌い始めることができたのは、その声援を受けてのこと。プロデューサーが卯月と組ませた時には、美穂の存在だけでは卯月の助けにはなりませんでしたが、Cuとしてここまで立ち直った今、ようやく身近なCuの理解者の存在が意味を持ちました。

最終話、今までの集大成としてのライブの裏で、美城常務とプロデューサーの最後の対決が行われました。

常務は、プロデューサー側の企画であるこのライブにプロジェクトクローネを参加させるなど、この時点でかなり妥協してはいますが、まだプロデューサーを認めようせず平行線だなどと評するなど、Coの枠に囚われています。

一方、卯月を通してすでにCuの力を得ているプロデューサーは、常務の価値を認めます。

最終話においてもなお、プロデューサーを許容する態度や言葉は示せなかった美城常務ですが、エンドロールでは専務となった彼女がシンデレラプロジェクトと和解している世界が描かれていました。それは、24話で卯月のステージを見たことにより身に着けたCuの力のおかげかもしれませんし、シンデレラプロジェクトでの経験からPaの力をも得て常務の心を動かすことのできたプロデューサーの成果なのかもしれません。

最大の敵役として設定されていた常務との、決着をつけることのない結末。すっきりしない終わり方でしたが、美城常務の主張する単属性の圧倒的強みと、プロデューサーが手掛けたニュージェネレーションズやシンデレラプロジェクト全体のような3属性の調和による強みが、ともに価値があると示すものだということにはなりました。

Coのやり方でうまくいくと考えていて失敗した経験を持つプロデューサーが、CuPaの力を得てアイドルプロデュースに必要な3属性を兼ね備えることができたというストーリーだったとすれば、3属性それぞれのアイドルで構成される原作ゲームへのリスペクトを込めたアニメ化だったといえるかもしれません。

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※この記事は、私が以前執筆し、「ねこまのちゃん」名義でniconicoブロマガに掲載していたものを、サービス終了に伴い修正のうえ移転したものです。